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  • 執筆者の写真弁護士 平井 優一

養育費の基本的な考え方

養育費の法的根拠


 養育費は,離婚後に,別れた元配偶者に対して請求できるものというイメージを持っている方は多いと思います。

 夫婦は,離婚すれば,赤の他人になり,また,未成年者の親権も,共同親権(民法818条3項本文)から,いずれか一方の単独親権となり(民法819条1項2項),多くの場合は,親権者となった親が,子どもを監護していくことになります。

 これに対し,親権者でなくなった親は,子どもを監護しなくなったとしても,親子関係を失うわけではありません。

 そこで,親権者でなくなった親も,養育費を負担することになります。


 では,養育費は,どのような法的根拠に基づいて請求できるのでしょうか。

 これには主に2つの考え方があります。

 一つは,直系血族間の扶養義務(民法877条1項)という考え方で,もう一つは,離婚後の子の監護に関する費用の分担(民法766条1項)という考え方です。

 一般的には,後者,すなわち,離婚後の子の監護に関する費用の分担であると考えられています。

 つまり,もし,直系血族である親子間の扶養義務なのであれば,養育費は,子が親に対して直接請求するものとなりますが,そうではなく,親同士が,子の養育に要する費用を分担するものと一般的には考えられているのです。

 したがって,養育費は,子を監護している親が,子を監護していない親に対して,子の養育に要する費用の支払いを求めるものということになります。


親の未成熟子に対する生活保持義務


 では,養育費の金額は,どのような水準で定められるのでしょうか。

 親は,未成熟子に対して,自己の生活を保持するのと同程度の生活を保持させるという「生活保持義務」を負っていると考えられており,これが,養育費の考え方のベースとなっています。

 ここで,未成熟子とは,未成年者という意味ではありません。

 未成熟子とは,「経済的に自ら独立して自己の生活費を獲得すべき時期の前段階にあって,いまだ社会的に独立人として期待されていない年齢の子」と考えられていて(参考1),必ずしも未成年者がすべて未成熟子にあたるとは限らないことや,成人であっても未成熟子にあたる場合があることに注意が必要です。

 未成熟子の意味について,ここでは深く立ち入りませんが,要するに,養育費は,親が子どもに対して,自分と同程度の生活をさせるためのものとイメージしておけばよろしいと思います。


まとめ


 養育費は,親権の有無や実際に子どもを養育しているかどうかにかかわらず,親として分担すべきものであり,その負担の程度は,自分の生活を保持するのと同程度ということになります。子どものためのお金であることを,まずは忘れないようにしましょう。


参考(書籍・雑誌,ウェブサイト等)


  1. 司法研修所編『養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究』(一般財団法人法曹会,2019)

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